
- 作品名
- ばらかもん
- 出版社
- スクウェア・エニックス
- 連載誌
- ガンガンONLINE
あらすじ
偉大な書道家を父に持つ、書道家「半田清舟」は、書展にて自分の作品を酷評した書道館の館長を感情に任せて殴ってしまいます。
彼の父親は見かねて自分自身を見つめ反省さるため、長崎県五島列島という自然豊かな島に半田を送り込みました。そんな旅立ちから話は始まります。
なんで自分がこんなところに来なければならないんだと思っていた半田清舟。慣れない田舎暮らしと、何故か家に潜り込んでくる子供たちに戸惑いつつも反発していたのですが、島で出会う少女「琴石なる」を中心に五島の個性的な人々と触れ合うにつれて、人と関わっていくことや、書道に対する自分の思い、書道家としてどのように自分はどの進むべきなのかを考え、その心も柔らかく変わっていきます。
ギャグあり、シリアスありの書道&ほっこりするような田舎暮らし漫画です。
レビュー
男性(20代)
最初はとても高飛車というか孤高の人でとっつきにくい半田ですが、五島で出会った「なる」という女の子を初めとした人々と触れ合っていくうちにどんどん島に馴染み、ストーリーが進むにつれて表情も柔らかくなってきておバカな面も露呈してきます。
そのおバカな面とは対照的に書道をするときの真剣なプロの書道家としての顔とのギャップが魅力的です。
今までにあまりなかった「書道」を題材にした漫画です。
かといって書道ばかりしているわけではなく、半分以上はなるたちと遊んでいるような…そこがまたいいです。
いつもこのもん(お漬物)をくれるおじいちゃん、ゆるい郷長、腐女子であることを認めたくないタマ…等魅力的なキャラがたくさん出てきます。
また、作中で半田が書展に出品することが何度かあるのですが、その度に次の作品はどんな作品だろう…とわくわくしながらページをめくっています。
ゆるい時と書道をする時のギャップ、個性豊かなキャラがこの作品の魅力だと思います。
おすすめのシーンですが、書展に出展する際に半田が書展に出展する作品を製作する際に嫌々東京の実家に戻って書くシーンがあります。
実家に帰るのが嫌なくらい五島に馴染んでいるのも笑えます。
五島と同じ環境で書きたい!ということで友人である川藤達をロープで縛ってなる達と遊んでいるところを再現しようとしたところを半田の母に見つかってあらぬ誤解を受けます。
そんなこんなで完成した作品。それは、島のみんなの名前を1枚の紙に書いたものでした。
半田にとっての大切なもの、ということでこの作品を製作したそうです。
自分のことしか考えられなかった半田が五島に行って大きく成長したことがわかったシーンでもありました。
あとはタマ(腐女子なのを隠している)が半田と浩志(五島の高校生/普通すぎることを気にしている)の二人が接近したり、何かしたりする度に過剰反応しているところが笑えます。その度に「私はそういうのじゃないから!」と言い張っていますが、明らかにそうにしか見えないです…。
五島でのゆるい日常が主なので、お仕事に疲れた方、何も考えずに漫画を楽しみたい人におすすめです。
日々お疲れの方に読んで頂きたいです。癒されること間違いなし!
女性(40代)
主人公、半田清舟はイケメンでありながら、極度の人見知りで、偉大な父親を自分は越えられないと自信もない青年です。
不器用ながらも、誠実に人と関わり、真摯に書道と向き合っていく姿勢が読む人の心を打ちます。誰に対しても優しい感情を持っていることがベースになっているのが魅力です。
イケメンなのに不器用でネガティブ思考な半田清舟と、いきなり東京からやってきた青年を暖かく迎える五島列島の住民たちとのやりとりが魅力です。個性的でありながらも、おおらかで優しい住人ばかりで、読むと暖かい気持ちになります。
暖かい気持ちにさせながらも、ギャグ要素が満載なのも面白いところです。登場人物たちが半田清舟に対して遠慮のないツッコミをするところや、ズカズカと自分の家に踏み込まれて村のさまざまな出来事に巻き込まれる半田清舟のワタワタぶりが楽しい漫画です。
自分の進路に悩みがある人におすすめです。特に若い人。
主人公の半田清舟もまだ20代の若き書道家であり、自分の字にいまひとつ自信が持てていません。どうがんばっても自分は父親を超えることはできないのではないかと葛藤しています。
登場人物もそれぞれの人生が丁寧に描かれています。
何もかもが「普通」と評価されてしまう金髪高校生が料理人を目指していく過程や、漫画家を目指している中学生、酒屋の娘が自分は何に向かって進んでいけばいいのか見えないと悩んだりします。
漫画のほんの一コマが心に沁みる漫画で、おすすめのシーンは単行本7巻の、「料理人になりたいけれど自分に出来るんだろうか」と悩む高校生に対して、半田清舟が、「必要なのは自信じゃなくて覚悟だろ」と諭す場面。
自分は料理人になりたいし自信もあるけれど周りは反対する、どうすればいいのか、という高校生に対し、どうして他人の太鼓判を欲しがるのだ、自分に自信があるならそれでいいじゃないかと言います。この言葉で、高校生は料理人への道を目指すことになります。
この言葉以外でも、半田清舟の何気ない真っ直ぐな一言一言が、登場人物の心に響き、自分の向かう方向へ導かれていくとうストーリー展開が多いです。