ヒューマンドラマ 青年マンガ

G戦場ヘヴンズドア

作品名
G戦場ヘヴンズドア
出版社

あらすじ

人気漫画家である父親を毛嫌いする主人公「堺田町蔵(さかいだまちぞう)」は、転校先の学校で漫画を描いているクラスメイト「長谷川鉄男(はせがわてつお)」に出会う。

小学生の頃、押し入れに入りきらないほど漫画を描いていた鉄男は、ある日を境に筆を置くことになった。
だが、家のためにお金が必要な鉄男は、漫画大賞に応募するため、町蔵が書いていた小説を原作に漫画を描きたいと申し出る。
最初は嫌がっていた町蔵だが、自称鉄男の彼女「菅原久美子(すがわらくみこ)」の脅し(?)や、偶然鉄男の生い立ちを知ったことで、大賞に応募することになる。

レビュー

男性(30代)

印象的なシーンは堺田町蔵は漫画を描く事でしか生きられない所まで追い込まれるが、それでも前を向いて漫画を描き続ける事を選んだところ。
長谷川鉄男は漫画のせいで苦しみ、父と漫画を憎むが、町蔵や仲間に支えられ漫画とかかわる人生を受け入れるところ。

一話一話に山場があり、簡単に読み飛ばすことが出来ないが、それが読後の満足感に繋がるところ。
決して多くを語らず、キャラの表情や最小限の台詞で最大限の想いを伝えようとする書き方。
人物の書き分けがハッキリしていて、見た目と言動が一致しているため、一人一人に感情移入しやすい。
とにかく引き込まれる台詞の数々。
2話目の最後「もしお前がもう一度、俺を震えさせてくれるのなら、この世界で、一緒に汚れてやる」
この台詞なんか特に。

漫画のために家族を捨てた父親、坂井大蔵への反抗で、漫画が嫌いだった町蔵。
町蔵が書いた小説に対し、坂井大蔵のにおいがすると言われた時はどんな気持ちだったのか。
久美子が町蔵を殺しにかかるようなキャラだったのが、いつの間にか大人しいキャラになる所。
漫画を憎むが故に、狂ったように漫画を描き続ける鉄男。

名言製造機、鉄男の父「阿久田鉄人(あくた てつひと)」
「上映中の私語はすべての作品への冒涜行為だ。死ね。」
「かわいそうになあ。気づいちゃったんだよなあ、誰も生き急げなんて言ってくれないことに」等々
特に気に入っているのは「君たちはこのままではすぐにわからなくなるだろう」から始まる台詞。
「君たちは君たちにしかなれない」
「君たちが書く必然がないマンガなどいらない」
は、何も持ってない自分を指摘されているかのような、それでも前を向いて生きて行ける何かがあるはずだ。
と言われているような気がして思わず震えてしまいました。

お勧めシーンは数え上げればきりがなく、一つ一つと上げていけばいつの間にかこの作品を全部語ってしまうほどです。
漫画家を目指す人はもちろん、自分の今に自信が持てない人にもぜひ読んでもらいたいです。
自分が望まない生き方でも「そのようにしか生きることが出来ない」のなら前を向いて進むしかない。
そう思わせる内容でした。
とにかく一度、手に取ってもらいたい漫画です。

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